1.年金から天引きされる住民税額が4~8月と10~2月で違う?
住民税とは、前年の所得に応じて課税される税金です。
公的年金(厚生年金など、以下「年金」という)も所得に算入されますので、年金をもらっている人も住民税がかかる場合があります。
65歳以上の方は、「年金にかかる住民税は年金から特別徴収(天引き)される」ということになっています。
その際、「年度の前半「4月~8月」と年度の後半「10月~2月」で天引きされる住民税額が違う」ということがよくあります。
あれ、これってなんででしょう?サラリーマンも給与から住民税が天引きになっていますが、1年間ほとんど同じ額が天引きになっていたはずなのに?
今回は、この疑問を解説したいと思います。
2.住民税額が決定する時期
ここで、まず住民税についておさらいしましょう。
住民税は前年の1~12月までの所得額などによって決まります。
そして、新年度の税額が決定するのがほとんどの自治体で「6月頃」なのです。
(※給与所得者の場合は5月頃)
6月上旬にその年の住民税額が決定し、「納税通知書、住民税額決定通知書」が皆さんの手元に届けられることになるのです。
3.年金から天引きされる住民税額が4~8月と10~2月で違うワケ
一方、年金の支給月は2ヶ月に1回(偶数月)です。
年度の初めから4月,6月,8月・・・(略)となりますね。
ここで、新しい年度がはじまって最初の年金の支給月である4月について考えてみましょう。
「4月になって新しい年度に入ったのに、住民税は6月に決定するため、4月の年金からいくら住民税を天引きすれば良いか分からない」という事態になってしまうのです。
そこで、考え出されたのが「仮特別徴収」という制度です。
4月から8月までに年金から住民税が天引きされることを仮特別徴収と言います。
簡単に説明すると、「年金から天引きする4月から8月までの住民税額は、前年度の税額を参考にして決めよう」というものです。
今年の住民税額がいくらになるか分からないのに前年度の税額を参考にして天引き額を決めてしまうので「仮」なんですね。
仮特別徴収税額の計算方法は、「前年度の年金にかかる住民税額÷6」です。
つまり、昨年の1回の年金支給につき天引きされていた住民税額の平均額になります。
分かりやすく、表を使って考えてみましょう。
昨年度の住民税額を60,000円、今年度の住民税額を48.000円とします。
年金収入のみの場合 | 公的年金からの特別徴収(天引き) |
仮徴収 | 本徴収 |
4月 | 6月 | 8月 | 10月 | 12月 | 2月 |
税額の計算方法 | 前年度の年金にかかる税金÷6 | 前年度の年金にかかる税金÷6 | 前年度の年金にかかる税金÷6 | 年税額から仮特別徴収税額を引いた額の1/3 | 年税額から仮特別徴収税額を引いた額の1/3 | 年税額から仮特別徴収税額を引いた額の1/3 |
税額 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 6,000 | 6,000円 | 6,000円 |
これまでに説明したとおり、4月~8月までは昨年度の税額を元に「仮」の住民税額を天引きします。この例だと、60,000円(昨年度の住民税額)÷6=10.,000円(昨年度の年金からの天引き額の平均)が仮特別徴収税額として、4月~8月まで年金から天引きされることになります。
ここで、6月に今年度の住民税額が48,000円に決定したらどうでしょう。
10月~2月までに年金から天引きされる住民税額は、年税額から4~8月に天引きした残りの税額の平均となります。
つまり、48,000円(年税額)-30,000円(4~8月で天引き済)=18,000円を10、12、2月の3回で分けて支払うことになるため、1回の年金からは18,000÷3=6,000円が天引きされるというわけです。
今回は、今年度の住民税が昨年度より安かったため、年度の後半(10月~2月)の方が年金から天引きされる住民税が安くなりました。
逆に、今年度の住民税が昨年より高かった場合、年度の前半(4月~8月)に比べて年度の後半(10月~2月)の方が住民税は高くなります。
「収入なんて毎年同じだよ!」という方もいらっしゃるかもしれませんが、収入は変わらなくても控除の額によって住民税は大きくかわることもあります。
たとえば、昨年度は医療費控除がたくさんあったけれど今年度は無い場合、その他の条件が同じならば今年度の住民税は昨年度より高くなります。
その場合、4~8月の年金から天引きされる住民税は昨年度の平均なのであまり変わらなくても、10月以降天引きの額が大きく増えてしまうこともあるんですね。
「6月に住民税の通知が来てその後何も変わってないのに、10月から急に年金から天引きされる住民税が変わった!」というケースの背景にはこのような事情があるのです。
むしろ、昨年度と今年度の税額が全く同じ方が稀でしょうから、「4月~8月と10月~2月では住民税が天引きされる額が変わっていることが多い」といえるでしょう。
ちなみに給与から住民税を天引きするときは、6月~翌年5月を1年度としているため、上記のような問題は発生しません。そのため、年度の途中で税額が変わることは修正申告などをしない限りはほとんどないのです。
ご覧いただき、ありとうございました!